「ゴジラ 60周年記念 デジタルリマスター版」
もう遙か昔、「ゴジラ」を何かの特集上映で初めて観た。
しかし、フィルムは傷だらけのボロボロ、音はこもりまくりでセリフがうまく聞き取れない。
今回、劇場で観るのは2回目になる。
公開から60年をむかえ、初回上映状態を再現したデ ジタルリマスター版。
丁度、アメリカ版のゴジラも公開されるので便乗する気持ちもあったかもしれない。
4Kスキャンされたデータを元に、ソフトウェアおよび手作業による1コマ1コマのごみ取り処理をし、音声も違和感を感じないようにノイズ除去をしたらしい。
とにかくその作業は無駄ではなかった。
画質は見事にクリアであり、傷がなくなっている。
あまりにも綺麗で細部までの再現は、フィルムだったらごまかせ特撮技術がわかってしまうのだが、それはそれで興味深い。
しかし、何よりも音声がきれいで聞き取りやすいこと。
これは今回特筆すべきことである。
当時の録音状態だと、ノイズを除去すると完全に無音になってしまう可能性が極めて高い。
ところが、そんな違和感が全くなく、かなり自然なのだ。
そのため、昔観た時に聞き取れなかったセリフが鮮明に苦労なく聞き取れるため、話がよく理解できた。
観ていて感じるのは、この映画が戦争を生活の一部として取り込んでいること。
この映画が作られたのが1954年。
終戦して10年経つか経たないかの時代背景は大きく作品に反映されている。
疎開や長崎の原爆という言葉は普通に自然に会話に出てきているのに、戦争の生々しさを強く感じた。
この映画をリアルタイムで観た人に話を聞いた時に「当時はとても怖かった」という人が意外に多かった。
え、あんな特撮で?……と思う人もいるかもしれないが、特撮がどうこうではないのである。
まだ戦争を引きずっている時代に、水爆実験。
そんなところに、水爆実験で出てきた無敵の怪獣。
ゴジラが怖いのではなく、ゴジラを通しての戦争への恐怖なのだ。
だから怖いの考え方が今と全く違う。
時代を考えれば、当然だろう。
公開された時代背景を考慮すると色々と納得してしまう。
もう歴史的資料でもあるのだ。
監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二。
出演は宝田明、河内桃子、平田昭彦、志村喬、さらには菅井きんの若かりし頃が……ってあまり晩年と変わらない。
もう再上映ではなく、新作として観るべし。
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