「魔女の宅急便」
宮崎駿監督のアニメ版がかなり有名で完成しているのに、実写映画化とはかなり無謀。
角野栄子の原作を映画化するのであって、アニメの映画化ではないらしい。
しかし、多くの人はアニメしか知らない。
アニメで原作を知った人もいる。
つまり、いくら原作の映画化といっても、一般の人はどうしてもアニメと比べてしまうのだ。
そしてアニメの方は宮崎駿がのりにのっている時期なので完成度は異常に高い。
監督が「呪怨」でお馴染み清水崇だ。
ホラーの大御所がファンタジーってどんだけギャップがあるんだ?
ほとんど負け戦っぽい感じである。
ところがいざ観てみると、そんなに悪くない。
いや、アニメとは違った意味でありだ。
アニメと違って実写は生々しい。
しかし、そこを生かして魔女のマイノリティであることを前面に出し、差別を含むダークな部分を描いている。
アニメがあくまでファンタジーで臭い物に蓋をしている状態なのに対して、実写版は魔女は存在は認められているものの、異質な存在であり、人によっては忌み嫌われる存在であることをきっちり描いている。
また、それを前面に出しているだけでなく、要所要所に匂わせていることが逆に怖さを感じる。
それが一番顕著に見られるのは、クライマックスの動物園のカバを医者に運ぶところだ。
嵐のような悪天候の中、園長はキキに病気のカバを運ぶ依頼をする。
ここで注意すべきは、動物園の職員が自分らが運ぶというのを、危険を理由に拒否している。
しかし、魔女にはそんな考慮はしていない。
つまり、成功したらOK、何かあっても魔女の責任なのである。
一見、良い話っぽいが実は魔女への差別が浮き彫りになっていて、陰湿で怖い。
他にもこんなファンタジーの話でもちゃんと「呪い」の要素が入っており、さすが清水監督、これが制限のある中での作家性だと感心。
ツッコミ所は沢山あるが、逆にマイノリティ差別や特別な才能への嫉妬などを描いた心意気は大きく評価したい。
特撮はショボいが、これもスピード感あふれるハリー・ポッターと比べると肩透かし。
ゆっくり飛ぶのだけど、一応飛ぶ時に一度がくんと落ちて持ち上がるところは妙にリアルだったりする。
主演はこれがスクリーン・デビューの小芝風花。
共演に尾野真千子(B83-W60-H86)、広田亮平、浅野忠信、筒井道隆、宮沢りえ(B82-W60-H85)…と意外に豪華。
おそらく30年前なら宮沢りえが主演だっただろうなあ。
ポスターの「はじめましてキキです」が「危機です」にはならなかったので良かった。
アニメ原理主義の人は観ない方が良いと思う。
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