「抱きしめたい ―真実の物語―」
そもそも映画に限らず物語で一番話が盛り上がるのは生死がかかっていることで、死なないために頑張り、死ぬことが最大の悲しみになる。
そのためアクション映画は生きるために知恵と勇気、体力を使い、病人は死ぬまでの短い時間を大切にするのだ。
手っ取り早く盛り上がって泣けるのは死に至る難病物だ。
ガンだろうが、恋をすると死ぬ病気だろうがなんでもいい。
病死は多くの人が多かれ少なかれ体験することであり、その相乗効果で大した話でなくても泣けてしまうのだ。
しかし、一方では映画やドラマに出てくる難病物は実に表現がユルく、実際に経験してみると、物語に出てくる病気は表面的なものでしかない場合が多い。
余命あとわすかなのに、健康な人以上に体力があったりするのだ。
そしてそれ以上に病人の周りの辛さが実はあまり描けていない。
自分は家族に要介護者がいて、記憶障害で昔のことは覚えていても新しいことは覚えられない。
歩くのは大きく足を開くことができないので、いつもよちよち歩きだ。
得することといえば、車ででかけると障害者スペースに駐車できることくらいだ。
そして、何が辛いって、この生活が本人が生きている限りず~っと続いていくのだ。
本人は自覚があるのかどうか知らないが、少なくとも家族のストレスはハンパないものがある。
そんな人間がこの映画を観たらどうなるのか?
交通事故で左半身と記憶に障害を負ってしまった女性と、彼女と恋に落ちた タクシー運転手の恋愛。
元ネタはテレビですっかり放送されている。
「余命1ヶ月の花嫁」路線の映画だ。
そもそも失礼を承知で言わせてもらうと、何故、最初からハンディキャップのあるとわかっている人と結婚しようと思ったのか?
実はこの映画の肝はそこにあるはずなのだが、そこはあまり触れず軽く流されてしまう。
実は障害がある人と暮らすのは予想以上に大変だ。
特にこの男女は今は男の方が色々助けてくれるけど、彼が年取って体が動かなくなったらどうするんだろう?
そんな先まで…と言われるかもしれない。
しかし、彼女が交通事故であんな状態になったように、彼だっていつ何時どうなるかわからない。
もちろん、誰しもそういうリスクはある。
後ろ向きな考えと言われそうだが、実際に体験すると、今までの考えが浅かったことを実感するのだ。
正直、この手の映画には全く期待していなかった。
ネタ映画としてしか観にいっただけだ。
しかし、意外にもこの映画は悪くない。
その要因の一つとして、泣かせる展開にはなっていないからだ。
もちろん、少しはそういう要素もあるのだが、少なくともそれがメインではなく、きちんとした恋愛映画のスタイルを守っている。
そして展開が暗くない。
確かにツッコミ所はある。
だけど前向きだ。
出演は北川景子(B75-W53-H81)と錦戸亮。
北川は公開映画目白押しで、すっかり映画女優になりつつある。
もうセーラームーンに出てたことは完全に封印されたんだな。
監督は「黄泉がえり」や「どろろ」の塩田明彦。
本編中にヒロインが事故ってから病院での治療&リハビリの撮影DVDが出てくるのだが、これがかなりリアルで、実際にかなり近いものがある。
そして、これがあるだけで映画の重みが全く違う。
だけど、病院で撮影すると怒られるんだけどね。
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