「地獄でなぜ悪い」
今まで自主映画、特に8ミリ映画をネタにした映画は色々あったが、大抵はノスタルジーな雰囲気を前面に出し、古き良き過去のアイテムとした扱いだった。
もちろん、そういう一面もあることは否定しない。
しかし、一方ではなりふり構わず自主映画制作に没頭した連中もいたことは忘れてはならない。
目指すはホラーだったり、SF映画だったり、アクション映画だったり、観客の満足は二の次、まずは自分が満足することを前提に、自分らの好きな映画をひたすら再現しようとしている。
そして根拠のない自信に満ちあふれており、チャンスさえあれば凄い映画を作ることができると信じている。
そんなどうしようもなく熱い8ミリ映画野郎の気持ちを描いている映画は少ない。
そして数少ない中の一本がこの映画だ。
自分の代わりに刑務所に入った妻のため、彼女の夢だった娘の映画デビューをかなえようと奔走するヤクザ、彼と激しく敵対するヤクザ、映画監督に間違えられた青年、彼に代わってメガホンを取る映画マニア。
それぞれ全く違う思惑を持つ彼らが1本の映画を作るため動き出した時、正に狂気の世界になっていく…。
何しろヤクザの出入りをそのまま映画として撮影してしまおうとするのだ。
もう無茶苦茶な話でリアリティなんてものは全くない。
しかし、そんな、良い言葉で言うとファンタジーな世界を、最初から最後まで勢いだけで見せていく。
「R100」が劇中劇ネタを使っているが、こちらの方が面白い。
何故なら、監督の園子温は映画の基本をわかているから。
どれだけ無茶苦茶に見える話でもきちんと基礎ができているから。
無茶苦茶な映画と、無茶苦茶に見える映画は全く違うのだ。
そして、この映画は明らかに後者だ。
園子温は自主映画出身なので、自主映画制作の心意気を把握している。
正直、つまらない人にはとことんつまらないかもしれない。
しかし、少しでも自主映画をやったことのある人間には、その心意気や切なさがビシビシ伝わってくる。
おそらく「杉山亮一さんの映画の撮り方・決定版!」をうまく作ったらこんな感じなんだろうなあ…ってマニアックすぎか(笑)
だからこそ、終盤の「撮れてるぞ」のセリフは泣けてくるのである。
ビデオ撮影ではわからないと思うが、現像に出して帰ってきたフィルムを映写機に装填して、映っている映像を観る。
これはもう何とも言えない不思議な気分で、さらにそれを編集して一本の映画になってしまった時の快感は、ちょっと経験できるものではない。
ましてや自分の求めるものが撮影できただけで舞い上がってしまう、
そして、この映画にはその癖になりそうな映画制作の快感みたいなものがビシビシと伝わってくる。
もちろん、そんなことは知らなくも、普通のコメディとして観ても面白い!
やたらと上映時間が長い園子温の映画では手頃な上映時間であることも良い。
出演は國村隼、堤真一、長谷川博己、星野源…など個性的すぎる役者勢揃いだが、その中でも二階堂ふみ(B74-W55-H80←今はもっと成長しているはず)が眩しいくらい輝いている。
かつては宮崎あおい(B72-W57-H84)のパチモンだと言われていた頃もあったが、貧乳のあおいちゃんよりよっぽどいいや。
とにかく、現役はもちろん、過去に映画青年だった人は必見!
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