「凶悪」
仮面ライダーのショッカーや007シリーズに出てくる悪役なんて、実は悪い悪いといいながらも、その根本は世界征服を企むベンチャー企業でしかなく、ちょっとだけ手段を選ばないところがあるだけにしかすぎない。
そして、何となく彼らには人としての常識はあるみたいで、どこか紳士的でもあり、人のルールに合わせているところもある。
しかし、本当の悪い奴は全く手段を選ばない。
そして、何より悪いことをしている自覚が全くないことだろう。
この映画は 死刑囚の告発をもとに、警察さえ把握していない殺人事件を掘り起こし、司直の手を逃れていた首謀者を追い詰めていった新潮45編集部の取材記録を綴った「凶悪 ある死刑囚の告発」を元にしている。
獄中の死刑囚から雑誌記者に届いた手紙、それは、まだ知られていない殺人事件についての告発だった。
彼は判決を受けた事件とはまた別に3件の殺人事件に関与しており、その事件の首謀者は“先生”と呼ばれる人物で、まだ娑婆でのうのうと暮らしているとのこと。
雑誌記者は彼の証言の裏付けを取るうちに、予想もできない真実を知ることになり、本人も事件にのめり込んでいく……。
出てくる犯罪者は世界征服を企んだりするようなことはしない。
やっていることは、簡単に言えば保険金殺人だ。
老人に保健をかけて殺人とばれないように殺すというもの。
そして、彼らの取引先は、借金を抱えて首が回らなくなってしまった普通の人々なのだ。
何故、普通の人々が?と思ってしまうが、例えばボケて介護のいるお年寄りがいるような家庭で、さらに借金があったらどうだろう?
正直、何とかならないものかと思ってしまう。
保険金目当てで人を仕事として死なせていく。
そこに後悔や迷いは全くない。
むしろ笑い、楽しんでいる。
正直、見ていて怖い。
そして、これが実話を元にしていると思うとさらに怖さ倍増してしまう。
雑誌記者も真実を追うために頑張るのだが、彼にはボケた母親とその介護を任せっきりにしている妻がいる。
果たして死んだ人よりも、生きている人、それも自分の家族が大切じゃないのか?
彼もまたやっていることが、彼らと何ら変わらないのかもしれない。
主演は「闇金ウシジマくん」で借金を取り立てていた山田孝之。
いや、それ狙いすぎでしょ(笑)
そして骨の髄まで悪者を演じるのがリリー・フランキー。
この一見さえない風貌で極悪非道なのが怖さ倍増。
この映画の後で「そして父になる」を見ると、絶対に子供は殺されてしまうと思ってしまう。
さらに彼と一緒に働くヤクザに「あまちゃん」の寿司屋の大将のピエール瀧。
これを見た後で「あまちゃん」見たら、スシネタが何か疑ってしまう。
監督は傑作「ロストパラダイス・イン・トーキョー」の白石和彌。
とにかく後味は悪いけど、人の心の奥底をえぐり込む凶悪な良作であることは間違いなし。
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