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2013年10月 1日 (火)

「凶悪」

Kyouaku_2 仮面ライダーのショッカーや007シリーズに出てくる悪役なんて、実は悪い悪いといいながらも、その根本は世界征服を企むベンチャー企業でしかなく、ちょっとだけ手段を選ばないところがあるだけにしかすぎない。
 そして、何となく彼らには人としての常識はあるみたいで、どこか紳士的でもあり、人のルールに合わせているところもある。
 しかし、本当の悪い奴は全く手段を選ばない。
 そして、何より悪いことをしている自覚が全くないことだろう。
 この映画は 死刑囚の告発をもとに、警察さえ把握していない殺人事件を掘り起こし、司直の手を逃れていた首謀者を追い詰めていった新潮45編集部の取材記録を綴った「凶悪 ある死刑囚の告発」を元にしている。
 獄中の死刑囚から雑誌記者に届いた手紙、それは、まだ知られていない殺人事件についての告発だった。
 彼は判決を受けた事件とはまた別に3件の殺人事件に関与しており、その事件の首謀者は“先生”と呼ばれる人物で、まだ娑婆でのうのうと暮らしているとのこと。
 雑誌記者は彼の証言の裏付けを取るうちに、予想もできない真実を知ることになり、本人も事件にのめり込んでいく……。
 出てくる犯罪者は世界征服を企んだりするようなことはしない。
 やっていることは、簡単に言えば保険金殺人だ。
 老人に保健をかけて殺人とばれないように殺すというもの。
 そして、彼らの取引先は、借金を抱えて首が回らなくなってしまった普通の人々なのだ。
 何故、普通の人々が?と思ってしまうが、例えばボケて介護のいるお年寄りがいるような家庭で、さらに借金があったらどうだろう?
 正直、何とかならないものかと思ってしまう。
 保険金目当てで人を仕事として死なせていく。
 そこに後悔や迷いは全くない。
 むしろ笑い、楽しんでいる。
 正直、見ていて怖い。
 そして、これが実話を元にしていると思うとさらに怖さ倍増してしまう。
 雑誌記者も真実を追うために頑張るのだが、彼にはボケた母親とその介護を任せっきりにしている妻がいる。
 果たして死んだ人よりも、生きている人、それも自分の家族が大切じゃないのか?
 彼もまたやっていることが、彼らと何ら変わらないのかもしれない。
 主演は「闇金ウシジマくん」で借金を取り立てていた山田孝之。
 いや、それ狙いすぎでしょ(笑)
 そして骨の髄まで悪者を演じるのがリリー・フランキー。
 この一見さえない風貌で極悪非道なのが怖さ倍増。
 この映画の後で「そして父になる」を見ると、絶対に子供は殺されてしまうと思ってしまう。
 さらに彼と一緒に働くヤクザに「あまちゃん」の寿司屋の大将のピエール瀧。
 これを見た後で「あまちゃん」見たら、スシネタが何か疑ってしまう。
 監督は傑作「ロストパラダイス・イン・トーキョー」の白石和彌。
 とにかく後味は悪いけど、人の心の奥底をえぐり込む凶悪な良作であることは間違いなし。
 
 

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