「少年H」
妹尾河童の自伝的ベストセラー小説の映画化。
戦時下の神戸で生きていく少年と家族の物語。
妹尾肇の一家は洋服の仕立屋を営む父、クリスチャンの母、2歳下の妹の4人で構成されている。
父は仕事柄、外国人との付き合いもあり、母は家では子供に標準語を使わせ、ナイフとフォークを使わせて食事をさせている。
自伝的小説なのでどこまで本当かわからないが、戦時下でこの手の一家が時代の空気を読まないために、周囲の偏見の目で見られてしまうフラグは思いっきり立ちまくり。
現在の目線だと極めて普通の一家も、当時としてはかなり近所で浮いている存在であることは言うまでもない。
原作は未読なので比較できないが、少なくとも自分はこの映画は普通に最後まで飽きることはなかった。
良い意味で朝の連ドラを観ているような感じだった。
おそらく、子供の頃だとこの手の映画は退屈だと思ったに違いない。
ところが、すっかりええ年になると感じ方が変わってくる。
ポリシーはわかるけど、この両親だったら子供はいじめられるよなあとか、自分の家族が食べていくのが精一杯なのに、他人に施しをするクリスチャンの母親とか、思ってしまう。
そして、子供の頃ならそういう信念を貫き通すのがかっこよく見えたけど、今だともうちょっとうまくやれよとか思ってしまう。
戦中→戦後は当然、世の中の考え方がコロッと変わる。
大人は切り替えが早いが、子供には納得できないかもしれない。
だけど、これって今でも形を変えて存在してるんだよね。
会社の経営方針なんか正にそれだ。
だけど、何事もなく黙々と仕事している。
まあ、これが大人ってことやね。
この映画って戦時中の話なのに、十分現在にも通用する話であり、それはそれで考えさせられるものがある。
だけど、この一家って意外に恵まれているんだけどね。
出演で注目なのは実際に夫婦の水谷豊と伊藤蘭の夫婦役だろう。
水谷豊が外人女性と結婚していたのは、なかったことにするのも、大人ってことかな。
監督は「鉄道員(ぽっぽや)」の降旗康男。
戦争ネタの映画化なら小林信彦の「ぼくたちの好きな戦争」を希望。
しかし、何故か彼の小説の映画化ってねこそぎ失敗するんよね。
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