「ガッチャマン」
とにかく、
大変つまらない。
この一言につきてしまう。
「科学忍者隊ガッチャマン」は1972年放送当時としては、SFアニメとしてはかなりのハイクオリティであり、特にSFデザインは今でも全くの遜色はない。
その後もOVAを含めて多くのシリーズが作られてきたが、ティム・バートンの「バットマン」が公開された時、この雰囲気で実写化も可能ではないかとさえ言われていた。
結局、それはSMAPのNTT東日本のCMで実現化してしまった。
そして、その完成度から本格的に劇場版を作ったら…という期待度はピークになっていく。
そして、今回めでたく劇場版が完成するに至る……それと同時に大きな失望を味わうことになる。
21世紀初頭。謎の侵略者ギャラクターによって、地球の半分が壊滅させられる。
ギャラクターから地球を守るため、“石”という特殊な結晶体の力を引き出せる適合者が集められ、特殊エージェントとしての訓練を受ける。
彼らはガッチャマンとしてギャラクターと戦う!!!
正直、設定は変えてもらってかまわない。
70年代のアニメなので、当然現在に合わせてのアレンジは必要である。
それでもオリジナルの精神は守るべきである。
「宇宙戦艦ヤマト2199」はオリジナルの精神を守りつつ21世紀版として昇華している。
だからこそオリジナルの矛盾を修正しても根本的な精神は守られているので違和感はない。
しかし、この映画はオリジナルの精神が全く守られていないので、偽物にしか思えないし全体的に違和感を拭えない。
オリジナルの要素は色々入れているのに、それを生かしきれていない。
新しく映像化するプラスαがないのだ。
そして何よりもダメなのは全体的に緊張感と緊迫感が足りない。
冒頭で物語の世界設定を説明しているのだが、ナレーションと文字での説明は「スター・ウォーズ」でも定番なのだが、あまりにもテンポが悪く、その後、勢いよく物語に入っていかない。
そのため、壮大な設定も信憑性に欠けてしまうのだ。
これは話の構築の仕方にも問題があって、例えばギャラクターからの亡命者と接触するためのパーティーに潜入するエピソードがあって、招待客の誰かと入れ替わるという作戦なのだが、入り口で認証されるまでに、ハッキングしてデータを書き換えなくてはならない。
その時間は行列に並んで自分がそこにたどり着くまでなのだが、これも実はあえて行列に並ばなくても、きちんと準備してからでも問題がなかったりするのだ。
さらに最後に東京壊滅まで残り6分とか言っている倍以上と体感させる長い時間、会話をしたりしているのだ。
もちろん、映画の中の時間というのはあるのだが、せめて不自然さと勢いがなければ成り立たない。
ところが、この映画は全体を通して、うだうだの演出なのである。
そして、最も見所であるべき、ガッチャマンスーツがエヴァンゲリオンのプラグスーツをパクったような感じであり、またそれが明るい昼間に出てくると非常に間抜けなのだ。
ティム・バートンのバットマン以降、間抜けなコスチュームをかっこよく見せる方法は色々提示されているのに、何故参考にできないのか?
そもそもガッチャマンスーツを着用する理由付けがされていないので、何故あのような〈醜い格好〉をして戦う必要があるのかがわからない。
アメコミのヒーローでもそうだが、コスチュームは普通に考えたら全く意味をなさないものであり、何故そういう格好をするのかを理由付けがいるのである。
この映画の場合、石の適合者であり、おそらく強化スーツであることはわかるのだが、例えば何かの象徴的なものとか理由がないと、あの格好で忍者とか言われても説得力はない。
そして、これらは数あるアメコミヒーロー映画という見本があるのに、全く参考にされていないのだ。
もし、そんな大がかりな理由付けがなくても、見た目の格好良さだけなら、仮面ライダーやスーパー戦隊の方が遙かにケレン味があって見せ方が上手い。
いや、正直言うと、毎年公開されている仮面ライダーやスーパー戦隊の映画の方が遙かに面白いのだ。
これだったらSMAPのNTT東日本のCMだけで良く、あえて作る必要性は全くなく制作スタッフの力量不足を出しただけにすぎない。
出演はガッチャマンの5人に松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽(B77-W58-H84)、濱田龍臣、鈴木亮平。
さらに南部博士が岸谷五朗って胡散臭すぎだろ!
監督は「カイジ 人生逆転ゲーム」「ごくせん THE MOVIE」の佐藤東弥。
この監督の「ごくせん」の映画は稀に見るくらい最悪だったなあ。
明らかに続編を作る気満々の最後だが、そこはもうアメコミでお馴染みリブートとか適当な理由で、この映画はなかったことにしてもらいたい。
あと、アメリカだとTVシリーズの映画化の場合、どこかでオリジナルの音楽を少し使ったりアレンジしたりして挿入して、かつてのファンへやオリジナルへの敬意が払われるんだけど、日本はそういう心意気が全くないのも残念。
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