「ぼっちゃん」
タイトルだけ聞くと、夏目漱石の「坊ちゃん」の再度映画化だと思う人もいるかもしれない。
西城秀樹が主演のやつとか、モンキーパンチがキャラデザインのアニメとか思いだしてしまうが、この映画は微塵も関係ない。
秋葉原無差別殺傷事件の犯人を元ネタにしている。
彼女も友達もいない非正規社員で、携帯の掲示板で憂さ晴らしをしている男が、期間工で突然眠ってしまう奇病の持ち主と仲良くなる。
初めての友達に浮かれるが、やがて会社の人員整理や、全く成就しそうもない恋愛、そして友人の裏切り等、追い込まれていくうちに、いつしか秋葉原に向かうのだった…って何故、秋葉原?と思ったが、元ネタがそうだから仕方ない。
だから例の事件をびっちり調べて観にいくと超肩透かし状態。
何故なら、実録物ではなく、モチーフにしているだけだから。
それ以前に実際の事件に至るまでの心境なんか想像するしかないのだ。
事件のことを差し引いても大変面白い!
どうしようもないどん詰まり感が物凄く出ている。
確かに男女関係なく見た目は大事で、貧相で不細工はどうしようもないし、だからこそコミュ障害になっていくのもよくわかる。
正に負のスパイラル状態だ。
さらに、契約で働く工場の殺伐とした雰囲気とか、観ていて大変辛く感じる。
特に主人公に近い人は本当に辛いだろう。
だけど、ここまで追いつめられて、事件に至るわけなので、実は意外に根性があるのではないか?
少なくとも自分だったら無理だな。
監督は「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「まほろ駅前多田便利軒」の大森立嗣。
あれ、結構有名な映画を監督しているのに、何故この映画?と思ってしまう。
主演はMr.オクレ……かと思いきや、「SR サイタマノラッパー」の水澤紳吾。
この存在感のなさは見事だ。
共演に中村獅童かと思ってたら、淵上泰史。
意外に行動範囲が会社と寮周辺という狭い範囲だが、これが逆に行き場のない閉息な感じが出ていて良いのかも。
映画と言えばデートの定番だが、この映画はそんな充実した人間が観てはいけない。
煮詰まっている人こそ、観なくてはならないのだ。
もちろん、1人で。
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