「悪魔の毒々モンスター ノーカット無修正完全版」
何でもありの自主映画だが、時代によって演出の流れがある。
例えば1970年代は、遠くからズームアップというのが多いが、これは当時の商業映画の流行だからだ。
1980年代初期は、シーンごとにBGMが入って最後はフェードアウトというパターンが多い。
おそらく、わかる人にはわかるが、もしわからない場合は「悪魔の毒々モンスター」を観て欲しい。
この映画は良くも悪くも1980年代の8ミリフィルムで作る自主映画の雰囲気が詰まっている。
もちろん、腐っても商業映画なので必要最低限の作りではあるが、当時の自主映画はこれを劣化コピーしたようなものが、どれほど多いことか。
そして、まさか21世紀になって、再び劇場で「悪魔の毒々モンスター」を観ることになるとは思わなかった。
今更説明するまでもなく、「悪魔の毒々モンスター」は、トロマ・エンタテイメントの映画だ。
トロマ・エンタテインメントは、ロイド・カウフマンとマイケル・ハーツが74年に設立した映画製作配給会社で、大手メジャーハリウッド映画では扱わない過激なネタのアクション、ホラー、コメディの怪作、珍作、極希に傑作を世に送り出している。
一部のマニアにはロイド・カウフマンは、ロジャー・コーマンと並び称されている伝説の映画人だ。
今回、「トロマの逆襲2013!」と題した企画で、最新作「チキン・オブ・ザ・デッド 悪魔の毒々バリューセット」と、ノーカット無修正完全版「悪魔の毒々モンスター」が公開される。
正直、何がどうノーカット無修正版かわからない。
有毒廃棄物を全身に浴び醜いモンスターになってしまった青年が、街の悪党どもを退治していく。
こう聞くと、昨今のバットマンやスパイダーマンのアメコミのヒーローの映画化と同じような感じだが、そこはやっぱりトロマ映画なので、お下劣ネタとオッパイ、それにチャップリンの「街の灯」の要素を入れてテンコ盛り状態。
良くも悪くも1980年代の雰囲気が出まくりで、さすがリアルタイム!これは21世紀に人工的に再現しようとしても無理だ。
改めてみると、やぱり1980年代の8ミリフィルム自主映画の雰囲気を思い出した。
こんな感じのBGMの使い方だったなあ。
一方、この映画を観て色々な意味で勇気をもらった大学の映画サークルもあったことも確かで、当時、どれだけ劣化コピーの作品が溢れたことか。
当時のホラー系を目指す映画サークルに「これくらいなら自分らもできるかも」と思わせてしまった意味では、その影響はかなり大きい。
しかし、残念ながら、自主映画におけるこの映画の役割を多くの人は知らないので、あえて自分だけでも書き留めておきたい。
さらに思い出すのは、本来ならまず日本では上映されそうもないトロマ映画が次々と入ってきたのは、当時やっと家庭用ビデオデッキが普及し始めた頃で、とりあえずかき集めていた頃でもあったからかもしれない。
まさか、今、歴史的価値が出てくるとは、当時は思いもしなかったけど、これが時代の流れか。
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