「あの娘が海辺で踊ってる」
学生時代は金はないが時間はある。
しかし、何かしたい時は金がいる。
だからバイトにいそしむわけで、そうすると今度は時間がなくなってしまう。
正にタイム・イズ・マネーとはこのことである。
時間があるから、比較的どうでもいいことにのめりこんでしまうのだ。
その中でも映画制作は、金と時間が湯水のように消費されていく。
特に学生時代の自主映画は、仕事ではないので自分のやりたいようにできてしまう。
そのため、金や時間がどんどんつぎこまれる。
今はデジタル撮影だからいいものの、昔はフィルム撮影で現像代を含めるととんでもない金額になってしまう。
フィルムはやり直しが効かないし、大体2/3はジャンクフィルムになってしまう。
現像しないとちゃんと写っているかどうかもわからない。
失敗したらやり直し。
時間と金がどんどん消えていく。
映画制作のない時は、ひたすらバイトという負のスパイラル状態。
それなのに作ったものはイマイチだったりする。
技術や段取りがよくわかっていないからだ。
しかし、そこまで苦労しても、完成した映画は何よりも愛おしく、唯一無二なのである。
昔、フィルムで撮影していた人に言わせると、初めて撮ったフィルムを映写した時は物凄く勘当するし、映画が完成した時の感動は何物にも変えることはできないらしい。
おそらくすぐに確認ができるデジタル撮影とは違うものがあるのだろう。
これはいわゆる映画制作ハイ状態というもので、陸上選手の脳内麻薬に近いものがあるらしい。
演劇やってる人も同じようなハイになるらしいのだ。
しかし、これで味をしめると卒業しても就職せずフリーターやりながら自主映画を作るという方向に進んでしまう人もいる。
まあ、ここで役に立たないアドバイスをさせてもらうと、とりあえず就職しても、フリーターでも自主映画は作れるので、それだったら正社員になって自主映画を作ればいいし、プロになりたければ、そういう方面に就職するのが良い。
卒業して定職につかすに自主映画をやるべきではない。
さて、自分も若気の至りで、昔は自主映画を観にいっていた。
将来の監督を発掘すると息巻いていたのだ。
しかし、色々観て思ったのは、やっぱり商業映画が一番ということであり、つまらない自主映画は苦行である。
すっかり前置きが長くなってしまったが、この映画は上智大学の映画研究会が制作した学生映画である。
話は、男女4人夏物語と言ってもいいかもしれない。
熱海を舞台に、AKB48に憧れる自意識過剰で田舎の町なので存在が浮きまくっている美少女・舞子、彼女の唯一の友人で日本舞踊が趣味の『ホトケの菅原』が、三味線部の笹谷、古野との出会うことにより、色々なことがかわりつつある…といった感じだ。
東京学生映画祭審査員特別賞を受賞しているが、その名の通りどこまでいっても学生の映画でしかないのだ。
セリフが聞き辛いところがあったりするのは、もっと何とかしてほしいと思ったりする。
そして、トレンディドラマのような男女4人の恋愛劇を期待しすぎてはいけない。
娯楽映画としてのサービス精神はお世辞にも良いとはいえない。
しかし、あまりにもギラギラとしたやりたいこと丸出しであり、良い言葉で言えば作家性全開!!
これが若さ故の学生自主映画ってやつなのか。
比べても仕方ないが、1980年代くらいの自主映画に比べると遙かに面白くよくできていると思う。
おそらく時代が変わって、これがデジタル世代の学生映画なのかもしれない、
個人的にはアイド ルに憧れながらも海辺の田舎町で何もできずにイラついている女の子の気持ちが滅茶苦茶共感できてしまう。
海辺で踊ってる…ってまんまなんやね。
だけど、踊っているところは、かなり感動したよ。
監督の山戸結希はこれが処女作らしい。
技術がついたらもっと面白い映画を作りそう。
次回作を期待!
あ、だけど、今回たまたまで、自主映画が好きってわけじゃないんだからね。
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