「遺体 明日への十日間」
「はいからさんが通る」の例を出すまでもなく、すっかり歴史物のネタになっている関東大震災。
おそらくリアルタイムで経験した人が少なくなってしまい、今や伝説の域に入りつつあるからかもしれない。
あの阪神大震災でさえも、15年以上経過すると歴史の1コマになりつつある。
もちろんそれらを忘れてはいけないが、生々しく記憶しているよりも遙か忘却の彼方に行った方が良いのかもしれない。
もしくは冷静に思い返せれば良いのかもしれない。
しかし、東日本大震災は全く別だ。
まだ歴史の1コマにはなっていない。
いや、むしろ終わっていないし、続いている。
この映画は、東日本大震災の遺体安置所として使われた中学校の体育館を舞台に、次々と運び込まれる遺体の身元確認作業に当たった人々の話だ。
多くの報道は制限をしているので、震災の全てを出しているわけではない。
亡くなった人よりも生きている人への情報が最優先だ。
しかし、あれだけの被害で多くの人が亡くなっているのだから、その遺体をどうしているかはあまり触れていない。
この映画は、あえて目を背けたくなるようなことを追求している。
生きるためのライフラインがままならぬ状態なのに、どんどん運び込まれてくる遺体。
当然、身元不明のものも多く、それを調べるのもかなり苦しく辛い。
普段の生活で遺体に接することもなく、ましてや無惨に変わってしまった様を見るだけでなく、触ったりすることがどれだけの精神的に来るかは、想像以上かもしれない。
その意味ではこの映画の着眼点は良いと思う。
監督は「踊る大捜査線」シリーズの脚本でお馴染み君塚良一。
実は彼は映画監督としては、あまり上手いとは思えないし、面白い作品が極めて少ない。
この映画が面白いかどうかと言われても、扱っているテーマがテーマだけに悪くいい辛いが、悪くはないので、念のため。
主演は西田敏行、共演に柳葉敏郎、國村隼、佐野史郎、佐藤浩市。
正直、ここ最近の西田敏行は、どれだけいい人を演じても胡散臭く見えるというか狙っているようなお馴染みの演技がちょっと鼻についてしまう。
これからも震災ネタは色々出てくるが、安易に使ってもらいたくない。
気楽にどうしようもない作品を作るくらいなら、その費用を寄付した方が世のためだよ。
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