「ゼロ・ダーク・サーティ」
映画における歴史的絶対的な悪役はヒトラーであるが、それに最近はビンラディンが加わりつつある。
911 全米同時多発テロの首謀者にしてテロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン。
彼の行方をアメリカは巨大な予算をつぎこんで捜索しているのに、一向に手掛かりが掴めなかった。
この映画は、ビンラディン捜索チームに抜擢された若きCIA分析官を主人公に、ビンラディン暗殺をめぐる驚愕の舞台裏を描いたサスペンスいや正確には歴史物かもしれない。
国家規模の大捕り物と言われるビンラディンの探索。
それに関与したのは、一見そうは見えないが実は情報収集と分析に天才的な感覚を持つ女性だった!
これがどこまで事実に近いかどうかはわからないが、いずれにしろ、つい最近の出来事で生々しさが残っているような題材を映画化しているのは凄いと思う。
前半はひたすら情報収集と分析、後半でアジトに突入という極めてシンプルな構成。
前半はひたすら地味だし、突入も爽快なアクションものではない。
疲れていると寝てしまいそうだ。
しかし、時々、爆発音がして目が覚めてしまう。
実はこの映画は下手なホラーやアクション映画よりも緊張感と緊迫感が漂っている。
そしてそれらは物凄く現実味があるため、観ていて物凄く疲れてしまうのだ。
莫大な予算をつぎこんでいるのに全く手掛かりがつかめないビンラディンの行方は、焦りとやるせなさを感じてる。
特に仕事とはいえ、拷問はやる方もやられる方も消耗してしまう。
その間にも発生する爆破テロは、何の前触れもなく場所も人も選ばない。
この映画は正にそれで、静かな中で突然爆発シーンが出てくる。
ビンラディンのアジトへの急襲は、アクション映画の痛快さは微塵もなく、一方的な惨殺にししか見えない。
全編緊張感と緊迫感だけならまだしも、切なさや空しさまで上乗せされている。
そして、これがつい最近の起こった事実を元にしていると思うと、リアルな怖さを感じるのだった。
上映時間158分。
しかし、その長さは、ビンラディンを追いかけている長い期間を圧縮したみたいなものだと思えば納得できてしまうのだ。
脚本がマーク・ボール、監督がキャスリン・ビグローの「ハート・ロッカー」コンビなので、この緊張感と緊迫感は当然かもしれない。
ビンラディンを殺害してスカッと爽やか、仇討ちができた…というわけでもないのが、ヒトラーと違うところだ。
絶対的な悪といのが存在するのか?
今回の一連の件も果たして、アメリカに全く非はないのか?
視点を変えた見方もできるのが、この映画のもう一つの興味深いところだったりする、
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