「エイリアン」
レンタルが普及し、ソフトが物凄く安くなってきたどころか、下手したらネットで何でも見ることができる今の時代、当然名画座の存在は極めて難しくなってきたのは今更言うまでもないだろう。
しかし、名画座の存在は難しくても過去の映画を劇場で観ることがなくなったわけでもない。
デジタルリマスター版の上映が正にそれだ。
傷だらけのフィルム上映より、綺麗な画面で観たいと思う人が多いと思う。
まあそんなわけで、午前十時の映画祭は貴重だ。
過去の作品で見逃したり、再度観たい映画を上映してくれる。
そんなわけで超久しぶりに「エイリアン」だ。
今更説明するまでもないが、この映画がなかったら日本人は宇宙人=エイリアンという概念はないと思う。
初公開が1979年の7月。
当時、物凄く大ヒットしたかというと、実はそうでもない。
何故なら同じ時期に「スーパーマン」が公開されていて、多くの人はそっちに流れていったからだ。
今、改めて観ると、当時の考えるSFデザインで、特にコンピューター関係は、今の目線からだと未来の話なのに過去のシステムになっている。
文字が緑色で、ワイヤーフレームの画像は、当時は未来の象徴であり、当然モニターは液晶ではない。
考えてもみれば、当時はインベーダーゲームが出てきて学生も社会人も毎日地球防衛のために百円玉をつぎ込み、その金欲しさに盗みを働いていた中高生もいたくらいだ。
あの時、警察に連れて行かれた子供達は、大人になって、百円あればインベーダーより高度なゲームが買える時代が来るとは思いもしなかっただろう。
YMOで初めてテクノミュージックを聞いて感動していたあの頃、電卓が高くてそろばん塾に通っていた時代にコンピューターは、バビル二世しか持っていないと思っていた時代なのだ。
だからこそ今、この映画を観ると古き良き未来SFという感じがして、何ともいえない味がある。
今の時代では考えられないことだが、宇宙船の中でパッカパッカタバコを吸っている。
昔はタバコ=かっこいいみたいな風潮もあったからかもしれない。
そういえば、国鉄時代は電車の中でもタバコを吸いまくっていた。
今でこそ名作SF映画として絶対的な地位を確立している「エイリアン」だが、公開時は売りがあまりなく、その前年に公開してブームだった「スター・ウォーズ」の人気に便乗しているような感じだった。
今でこそシリーズの顔であるシガーニー・ウィーヴァーも新人扱いであり、トップに名前は出てこない。
主役はトム・スケリットだ。
いや、おそらく一番有名なのはヤフェット・コットーだろう。
まさか彼女がエイリアンをばったばった倒し、実はエイリアン以上に怖い存在になると誰が考えただろうか?
一応、パンツとタンクトップでうろつくシーンがあり、一応お色気要員的なところもあるのだが、萌えをあまり感じない。
監督のリドリー・スコットは今でこそ名監督だが、この映画の時は新人扱い。
人に歴史ありというが、今なら監督と女優の名前だけで宣伝ができそうだが、ここがスタート地点なわけやね。
公開当時、コミックスも出ていたが、日本版ディレクターが松本零士先生。
「字幕が読めない子供達のために」というキャッチコピーが泣かせる。
昔は吹替版なんかなかった。
何故、松本先生?と思うかもしれないが、当時、先生は「銀河鉄道999」を中心とした漫画やアニメが大ヒット!
正に松本先生の一番のピークかもしれない。
そんな彼が少しでも関係しているだけで、買ってしまう人もいたくらいだった。
だから1979年の夏は洋画は「スーパーマン」、邦画は「銀河鉄道999」が大ヒットで、「エイリアン」は一番ではないのだ。
久しぶりの「エイリアン」をまさかシネコンで観ることになるとは思わなかった。
これさえ見ておけば「プロメテウス」がもっと楽しめると思ったら、楽しめるどころか「エイリアン」の面白さを再認識してしまった。
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