「ヴァンパイア」
多くの人は岩井俊二の映画に求めるのは「Love Letter」や「 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 」のような路線である。
ところが、岩井俊二自身はそういうことをやりたいとは思っていない。
クリエーターの作りたい物がと観客の見たいものと合致した場合、映画としては究極の幸せであるのだが、逆に全く合致しない場合は極めて不幸だ。
この映画はタイトルだけで大損をしている。
正直、ここ最近はゾンビ映画は食傷気味だが、吸血鬼物だって今更感が強い。
この映画はその手のホラーとは少し違うのだが、タイトル聞いただけでは多くの人が吸血鬼物だと思い込む可能性は極めて大きい。
っつうか、自分なんだけどね。
認知症を患う母と同居する高校教師の主人公は血を求めずにいられない性癖を持っており、ウェブサイトに集う若者たちから血を抜いている……という話で、本物の(?)吸血鬼ではなく、血を扱った猟奇的な殺人事件の犯人が主人公だ。
真剣つまらない。
「花とアリス」以来8年ぶりの長編ドラマがこれだと思うと悲しいものがある。
出演者も知らない人ばかりで、唯一有名な蒼井優(B78-W64-H85)でさえも、彼女の無駄遣いでしかない。
知的で繊細であり孤独な主人公とか、自殺サイトに集まる人々とか、そんなの「リリィ・シュシュのすべて」でやったことの焼き直しにしかすぎないし、やるなら過去の作品を越えるべきだと思うのだが、残念なことに焼き直しというか劣化コピーのような感じが否めない。
おそらく、多くの人が彼の作品に求めるリリカルな世界は、この映画の中に時々チラッとその片鱗が出てくる。
もちろん、ファンの求める心地よさと、監督の作家としての新しいことへのチャレンジは必ずしも一致するものではない。
ただ、新しくやりたいことが、観客の求めるものより上を行っていれば誰も文句は言わないのだが、それがなかなか難しいものがある。
この映画も粗筋だけ聞くとあまり観る気になれなかったのだが、岩井俊二が監督しているから観にいっているだけで、そう考えると彼の昔の功績は大きいのかな。
いわゆる惚れた弱みというやつかもしれない。
今回の映画で一番良かったのは、毎度お馴染みゲロを吐きそうなくらい気持ち悪い手持ちカメラの撮影が少なかったことか。
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