「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
あの日は、家に帰ってテレビをつけたら、ビルから煙が上がっている映像ばかりだった。
その時は何が何だかわからない状態だった。
時間が経過するにつれて状況は掴めてくるのだが、誰のせいで、何が目的で、そんなことをしたかわからなかった。
海の向こうの国の話で関係ないと思っていたが、取引先が現場の近くに事務所をかまえていたことを知る。
結果的には無事だったのだが、ちょっと関わっているだけでも、ここまで不安になるのに、原地の当事者の気持ちは計り知れない。
この映画の主人公である少年は、この事件で父親を失ってしまう。
しかし、すぐにその現実を受けいることができない。
例えば病気で死ぬとか、自分にある程度心の準備ができているわけではなく、何の伏線もなく突然、全く状況もわからずに、現実だけをつきつけられた場合、大人だってすぐに対応ができない。
そして、さらにその状況がわからない状態は終わったかどうかもわからず、次があるかどうかも予想ができないのだ。
これを子供に理解させることは不可能である。
ある日、 少年は父の遺品の中から一本の鍵を見つける。
入っていた封筒に「ブラック」の文字があることから、少年は鍵に父のメッセージが託されていると確信する。
母親に内緒でニューヨークに住むブラックという名前をしらみつぶしに訪ねて謎を解き明かそうする。
正直、あまりにも無謀だ。
少年の無謀で傍若無人の振る舞いにはちょっと気分が悪い。
これが元々そういう精神の持ち主なのか、ショックでそうなったのかはわからない。
ただ、子供の故の非力さとどうしようもなさがひしひしと伝わってくるのだ。
少年の祖母のアパートに間借りしている口のきけない老人が鍵穴探しを手伝うようになってから物語は面白くなっていく。
これは演じているマックス・フォン・シドーの存在が極めて大きい。
しかし、物語のピークはここで、残念なことにその後は失速していく。
上映時間の長さによるものが大きい。
色々なものを引っ張り過ぎたからだ。
もう少し短くまとめれば違ったものになった可能性が大きい。
ツッコミ所も満載だ。
泣かせるための逆算っぽいあざとさも感じる。
少年の父親役がトム・ハンクスというのも狙いすぎだ。
「リトル・ダンサー」「愛を読むひと」のスティーヴン・ダルドリー監督が映画化なので期待しすぎたかもしれない。
一昨年までだったら、この映画に対しては、主演の少年トーマス・ホーンが「ホームアローン」のマコーレ・カルキンのような将来を突き進むかもしれないとだけ思うだけかもしれない。
しかし、昨年の3月11日以降は感じ方に変化が生じてしまった。
少年の気持ちが遠からずわかるからだ。
この映画を軽く流せないのは、そこに理由がある。
参加してます。よろしくで~す
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