「悪人」
仕事は土木作業員で、年老いた祖父母の面倒見るだけの寂しい生活をしている清水祐一(妻夫木聡)は、出会い系サイトで知り合った福岡の保険外交員・石橋佳乃(満島ひかり)を殺害してしまう。
ところが警察は、佳乃がつきあっていた大学生・増尾圭吾(岡田将生)を容疑者として捜査をしていた。
人を殺した重圧に耐えながら日常生活を送る祐一に、一通のメールが来る。
かつて出会い系サイトでメールのやり取りをした馬込光代(深津絵里)からのメールだった。
妹と二人暮しで紳士服量販店に努める彼女も孤独だった。
そんな二人は初めて直接会ったその日にホテルに直行!
そして祐一は人殺しをしたことを光代に告白する。
しかし、それでも祐一を愛する光代は離れず、やがて二人の逃避行が始まる…
吉田修一の小説の映画化だが自分は未読。
しかしそれよりもモントリオール世界映画祭で深津絵里(B83-W57-H83)が最優秀女優賞をもらったことが話題だ。
そのせいか公開初日は座席が結構埋まっていた。
予告編を観た感じでは、殺人犯人と被害者の家族の犯罪糾弾物で、悪人というのは犯人のことかと思っていたのだが、実は究極の恋愛映画だった。
成田美名子先生の「エイリアン通り」の4巻で「天使でも悪魔でも好きだったんだ」みたいなとセリフ(うるおぼえすまん)があったが、この映画の祐一への光代の想いは正にそれだ。
そして悪人というのは、人を殺した祐一のことではなく、出てくる登場人物全員の心のどこかにある悪意のことなのだ。
全編を通して人の心の奥底にある気持ちを映像化しているようなものがある。
それは寂しさであったり、悪意であったり、やさしさであったり、まるで人の心を見透かされているような感じで、観ていて息苦しいものがある。
妻夫木聡と深津絵里の演技が素晴らしく、孤独でお互いを求め合う破滅型がけっぷち男女を演じきっており、本当に切ない。
一方では満島ひかり(B76-W58-H89)は人間のいやな部分を見事演じており、殺されて当然と思わせてしまう。
だからこそ、妻夫木演じる祐一が彼女を殺してしまう気持ちが理解できてしまう。
一方的な被害者にしていないのだ。
岡田将生のダメンズっぷりも見事だ。
これらの出演者の濃い演技がぶつかりあうことにより、人間の多面性が浮き彫りにされていく。
監督は「フラガール」の李相日。
かなり行間を読まなくてはならないし集中力のいる映画なので、テレビ番組の映画化感覚で観ていると、かなり不親切に感じる人もいるかもしれない。
まあそこは義務教育と違うので、連いてこれない人は置いてくぞっていうことで。
参加してます。よろしくで~す
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予告編の流し方も良かったからか、前評判はさておき、自分も是非観たいなと思っていた。
長崎在住の清水祐一は、博多で働く石橋佳乃と待ち合わせをしていた。しかし、待ち合わせ場所で佳乃は他の男の車に乗って行ってしまった。佳乃を追いかけた祐一は、福岡県の三瀬峠で彼女を殺してしまう。その後、長崎でいつも通りの日常を送っていた祐一は、... [続きを読む]
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「悪人」★★★★☆オススメ
妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、柄本明、樹木希林出演
李相日監督、139分 、2010年9月11日公開、2010,日本,東宝
(原題:悪人」)
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JUGEMテーマ:日本のTVドラマ
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「悪人」
予告編の緊迫した雰囲気に「面白いかも?」、妻夫木くんの本気に「凄いかも?」
とはジワジワ感じてはいましたが、そうですか。
満島ひかりちゃんも相変わらずいい演技をしてるとなれば、見なきゃいけませんね。
投稿: みみりん | 2010年9月16日 (木) 08時43分
>みみりんさんへ
満島ひかりちゃんは、相変わらず弾けていました。
ひょっとして深津ちゃんよりもいい演技だったかも(笑)
投稿: 管理人 | 2010年9月16日 (木) 22時14分