「ハウルの動く城」
「千と千尋の神隠し」以来3年ぶりの宮崎駿監督の新作は90歳の老婆に変えられた少女と美青年の恋を描いている。
声の出演はハウル役に木村拓哉、ソフィー役に倍賞千恵子(B82-W59-H84←1966年時)、荒地の魔女役に美輪明宏などで、相変わらず「声優グランプリ」に出てきそうな<本職の声優>は出てこない。
自分は今の声優はうまいと思っていないので、映画やTVで活躍する俳優を起用する方法はありだと思っている。
話題であり懸念されていたキムタクの声は思った以上にうまく、ハマり役で、必ずしも話題作りだけではないと感じた。
倍賞千恵子は少女時代と老婆をうまく演じており、実はこんなに若い声を出せるとは思わなかった。
最初、倍賞千恵子が声の出演で出ると聞いた時、団子屋で仕事をしながら「ハウル、今頃どうしているのかしら」と言うと、トランクを持った腹巻姿のハウルが歩いているシーンをイメージしたが、映画では見事そんなイメージは払拭している。
主題歌も彼女が歌っている。
倍賞千恵子の歌は自分的には「宇宙大怪獣ギララ」の主題歌以来のような気がするが、よくよく調べてみると、レコード大賞新人賞をもらっている人なのを知った。
美輪明宏は「もののけ姫」の時よりも良くて、特に今回荒地の魔女が普通の年寄りになってからが妙にうまい。
そして何よりマルクル役の神木隆之介が良い。
子供の声の時はきばりすぎていることが多いのだが、彼はきわめて普通だ。
「千と千尋の神隠し」の坊の声の時は、まあこんなもんかなあと思っていたけど、今回は大変うまくハマリ役。
そういえば、彼は「キリクと魔女」にも声の出演をしている。
「キリクと魔女」といえば、昔、「全編、チンポ放り出しているアニメが公開されてるぞ」と言われ、いそいそと観にいったんだけど、そりゃあアフリカの原住民の話だからそうなんだよね(遠い目)
我修院達也は昔、郷ひろみの物真似やってたし、「千と千尋」の蛙もうまかったからOKだけど、原田大二郎って犬の声でほとんどセリフらしいものは何もない、どっちかというと「チキチキマシン猛レース」のケンケンみたいな感じだけど、あれでよく出演OKしたなあ。
この作品は宮崎駿の映画としては、珍しく賛否両論に分かれると思う。
話がわかり辛く、色々な要素は提示されるが詳細な説明はしていない。
期待してしまう宮崎アクションもそれほど目立つものはなく、多くの観客は居心地の悪いものを感じるかもしれない。
とはいいながらも、今までの宮崎アニメの要素は詰まっていて、最初のハウルとソフィーの空を歩くところなんか、「カリ城」の三段跳びだし、話の全体的なイメージは「ラピュタ」や「魔女の宅急便」だし、小道具は「千と千尋」っぽい。
自分はこの映画を恋愛映画であり、家族の映画であり、老人介護の映画として大変面白かった。
不親切にみえる展開だが、おそらくこの映画は考えるのではなく感じる映画で、不思議なことに観終わった後は結構じわじわ来るものがある。
一見、女性向かなと思っていたが、とんでもない話で、実は大変男性向きの話で、この映画の恋愛の描き方は男の考え方である。
そして、あまりにもファンタジーのセオリー通りに進んでおり、普通ならもっと嘘臭くなったり、いかにもな展開になるはずなのだが、うまく昇華のさせている。
特にラストのキスシーンは、ファンタジーの定番とはいえ気恥ずかしくなく描いている。
物語の背景に戦争と言うものがあり、この映画の根本は<戦火の恋>なのだが、実は戦争は言うほど描かれていない。
いわゆる戦争はいけないというというのを強調しているわけでもなく、どちらかといえば、学生が就職して出て行く社会のような描き方であり、だからこそ動く城に集まってくる人々が家族となっていくところに共感を覚えるのだ。
だって電話一本で終わってしましそうな戦争だしね。
そして何よりも城の造詣と動きがすばらしい。
動きそうもないものが動いているのだけれど、動き具合に説得力がある。
いや、もちろん全編手放しで面白いと言うわけでもない。
最後に明かされる案山子のいきなりの正体には、ツッコミは入れたいしね。
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» 『ハウルの動く城』(2004) [【徒然なるままに・・・】]
『風の谷のナウシカ』以降の宮崎駿監督作品は、『となりのトトロ』を除いて全て劇場で見ているのですが、公開初日に足を運んだのは今回が初めてでしょう(もっとも『もののけ姫』の時のように、あまりの大行列に諦めて帰ったというのもありましたが)。といっても期待に胸を膨らませてということではなく、単に巡り合わせの産物です。それぐらい今回の作品には期待しておりませんでした。
にしても、原作を読んだ時も大して面白いとも思いませんでしたが、この映画版の方もさっぱりです。もしかすると宮崎監督作品中、一番つまらない作... [続きを読む]
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