「川の底からこんにちは」
ふと自分の人生を考えた場合、明らかに大成功でもないし、大失敗でもない。
おそらくそこそこなのだろうが、何かしら不満はある。
そんな状況をうまく表す言葉はないものか?と考えていたのだが、この映画を観て目からウロコがこぼれた。
中の下
この言葉がぴったりなのだ。
故郷を捨て上京五年目の佐和子。
五つ目の職場で、五人目の彼氏は子連れでバツイチの玩具会社の上司・健一で、全てにおいて妥協しまくった結果だ。
ぶっちゃけ彼女はかけおちで上京したのだが、その後さっさと別れたが、故郷には帰らなかったのだ。
まあ所詮若気の至りなのだが、わかりますよ、佐和子さん。
自分も若い時に似たようなことをしたから(爆)
今思い出しても恥ずかしい。
お父さん、お母さん、御免なさい。
振り返ってみれば、ただいちゃいちゃしたかっただけで、それを注意されてムキになっただけなんよね。
結局、二人で飛び出しても手持ちぶさで、結果的には泊まり込みで旅行にいったことになっただけ。
自分的にはかけおちなのに、親は無断外泊にしか思っていない。
いや~タイムマシンがあったら、当時の自分に説教したい。
自分の恥をさらすのはともかく、そんないけてない人生を送る佐和子のところに父親が倒れたと連絡が入る。
そのため、一人娘の佐和子が実家のしじみ工場を継ぐ事態になってしまう。
企画の失敗で失職した健一は、帰るのを渋る佐和子の気持ちそっちのけで、話を進めてしまい、結局、健一とその連れ子を伴って帰郷するはめに。
この健一のダメっぷりはイライラするのだが、佐和子はそれもあきらめているというか、仕方ないと思っている。
何しろ、中の下の自分にはそれくらいの男しか望めないから。
しじみ工場ではアクの強いおばちゃん従業員たちがいて、経営は倒産寸前。
もはや妥協さえ許されない状況の佐和子の明日はどっちだ…という川の底というより、人生のどん底からこんにちは状態だ。
佐和子の口癖の「しょうがない」は、おそらく誰しも大なり小なり口に出さなくても思っていることだろう。
そして物語の後半のキーワードとなる「中の下」という言葉は、あまりにも現実味がありすぎて心に刺さってしまう。
それでも開き直れば何かが見えてくるかも。
正直、この映画は一応、ハッピーエンドっぽいのだが、中の下のハッピーなんか所詮知れている。
ところが、よくあるサクセスストーリーよりも、遥かに元気をもらえる映画なのだ。
そして、その究極が、佐和子の努める木村水産の社歌で、これはもう頭に残ってしまうこと間違いなし。
今でも気を抜くと脳内BGMになってしまう。
主演は、マイナー映画の主演が多い満島ひかり(B76-W58-H89)。
相変わらず弾けまくっている。
監督は石井裕也。
何と、PFFスカラシップの映画だそうな。
今でもPFFがあったのには驚いたが、当然今は8ミリフィルムではなく、HDでの作品作りなんだろうなあ。
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