「ハート・ロッカー」
実は最初、ず~っとハード・ロッカーだと思っていたので、ジミヘンやヴァン・ヘイレンが出てくる映画だと思っていたが、ハート・ロッカーで、もっというとheartではなくhurtだった。
2004年のイラク・バグダッドを舞台に、米軍爆弾処理班を描いた話だ。
爆弾を仕掛けた者と戦っているはずなのだが、敵は明確に見えて来ない。
爆弾処理班が戦うのは仕掛けられた爆弾なのだ。
この爆弾処理班にリーダーとして新たに赴任したウィリアム・ジェームズ二等軍曹は873個の爆弾を処理したらしいのだが、彼の行動が型破りというより無茶苦茶で、他のメンバーは彼の行動に必要以上のプレッシャーに晒されることになる。
今年のアカデミー賞で「アバター」と競い合っていたらしいが、受賞したのは当然だろう。
「アバター」は3Dという技術的なところにポイントがあって話は微妙だしね。
とにかく全編に漂う緊迫感が尋常でなく観ていて疲れてしまう。
戦争物といえば、敵との銃撃戦を中心としたものが多いのだが、この映画はどこにあるかわからず、いつ爆発するかわからない爆弾というのが、ちょっと斬新だ。
本当は映画を通して、アメリカにおける戦争の位置付けとか、変わっていく人間の心理などを語るべきなのかもしれないが、自分の中でのこの映画はホラーに近い。
爆弾処理という究極の黒ヒゲ危機一髪状態に加え、イラク・バグダッドという異文化の土地で一般市民かテロリストかも分からない見物人に囲まれている孤独感と怖さなど、サスペンス要素がこれでもかという位テンコ盛り状態は、へたしたら普通のホラーよりも遥かに怖い。
ドキュメンタリータッチはここ最近の戦争映画のお約束だが、一方では爆発する瞬間の超スローモーションは緊迫感よりも美しさを感じてしまう。
この映画の冒頭の爆弾処理は、「プライベート・ライアン」の冒頭の銃撃戦に匹敵するくらいの緊迫感が漂っている。
「プライベート・ライアン」を“動”とするならば、この映画は“静”の緊迫感だろう。
さらには爆弾処理のエキスパートであるジェームズ二等軍曹の変貌にも怖い物があり、最後の彼の行動は色々な解釈ができてしまう。
監督はキャスリン・ビグローだから、ジェームズ・キャメロンの元嫁で、アカデミーは正に因縁対決だったわけだね。
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TB有難うございました。
ドキュメンタリー風の作品なので
ストーリー性は皆無でしたが、爆弾処理班から
戦争の日常が非常にリアルでした。
今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
クリックすることで5段階評価ができます。
もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!
投稿: シムウナ | 2010年4月11日 (日) 00時55分