「アイガー北壁」
昔、知人を山の遭難で亡くした。
死体は見つかっていない。
おそらく、今も永遠に溶けないであろうどこかの雪の下で眠っているのかもしれない。
この映画を観た時に、そのことを思い出した。
ベルリン・オリンピックを目前に控えた1936年夏。
ナチス政府は国力誇示のため、ドイツ人によるアイガー北壁初登頂を大きな目標に掲げ、成功者にはオリンピックと同じ金メダルを授与すると約束していた。
登山家として知られてきたトニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサーの2人は、麓で見物客の色々な意味での期待を背負いながらアイガー北壁への挑戦を開始!
一方、すぐ後をオーストリア隊が追いかける。
最初は楽勝だと思われたが、メンバーの負傷や急な悪天候に見舞われ、登頂よりも生き残るための戦いになっていく…。
アイガーというと、クリント・イーストウッドの「アイガーサンクション」を思い出す。
自分も昔、登山をしようとしていたのだが、これが本当に命懸けであり、自分の体力と装備で登ることができる山が決まってしまうわけで、思った以上に苛酷だ。
決まったルートを歩くのが精一杯で、道なき道を行ったり、ましてやこの映画のように岸壁を登るは素人には絶対に無理!
最初はドイツ版「剣岳」みたいな話かなと思ったのだが、登頂は最初の方だけで、後はひたすら下山を中心に描かれている。
とにかく観ていて息が詰まってそうであり、ちょっと降りるだけでも物凄く時間がかかるし、暖かい暖房の効いた劇場でも物凄く寒く思えてきてしまう。
さらに彼らを見守る麓のホテルは暖かく、熱々のスープを飲んだりしており、その対比が、山での苛酷さを際立たせてしまうのだ。
ほんのちょっと先に見えているのに救うことができない状況は、へたなホラー映画より怖いものがあり、クライマックスの救出劇は観ていて本当に苦しくなっつぃまうのだ。
出演は、ベンノ・フユルマンとか、ヨハンナ・ヴォカレクとか全く知らないし、 監督のフィリップ・シュテルツェルという舌をかみそうな名前も聞いたことがない。
見終わった後は、自分が山に登ったような疲労感があった。
結局、命懸けであろうが、どこまでいっても趣味の世界であり、そこで起こることは事故責任、いや自己責任でしかないのも忘れてはならないことなんだろうなあ。
おそらく自分の知人もこんな状態だったのかと思うと、いたたまれなくなってしまった。
« 「映画ドラえもん のび太の人魚大海戦」 | トップページ | 「ダレン・シャン」 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 「A Film About Coffee(ア・フィルム・アバウト・コーヒー)」(2016.01.06)
- 2015年外国映画ベストテン(2016.01.01)
- 2015年映画雑感(2016.01.05)
- 2015のダメ映画②(2016.01.04)
- 2015のダメ映画①(2016.01.03)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/185540/47910406
この記事へのトラックバック一覧です: 「アイガー北壁」:
» アイガー北壁 (試写会) [風に吹かれて]
なぜ登る公式サイト http://www.hokuheki.com3月20日公開公式ツイッター http://twitter.com/eiger_hokuhekiベルリンオリンピック開催直前の1936 [続きを読む]
» アイガー北壁(2008) NORDWAND [銅版画制作の日々]
生きて、還るーーー
久々のドイツ映画は、壮大なスケール作品でした。自然を相手にどこまで闘えるのかしら?なんて思ったけど。。。やっぱり自然ほど怖いものはない、と改めてまた痛感しましたよ(汗)伝説の登山家トニー・クルツの死闘は、こんなに凄かったんだと衝撃を受けましたわ。その昔、登山をやっていました。とはいっても岩壁と万年雪の山への登山経験はありません。クライミングも少し体験したことがあります(笑)それも一日の挑戦でリタイアしたもので。。。。お恥ずかしい話です。あ!そうそう冬山の経験もちょこ... [続きを読む]
» ■『アイガー北壁』■ [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2008年:ドイツ=オーストリア=スイス合作映画、フィリップ・シュテルツェル監督&脚本、ベンノ・フュルマン、フロリアン・ルーカス、ヨハンナ・ヴォカレク、ウルリッヒ・トゥクール、ジーモン・シュヴァルツ、ゲオルク・フリードリヒ出演。... [続きを読む]
» アイガー北壁★★★★+劇場37本目:過酷な... [kaoritalyたる所以]
3/21に観に行った映画の2本目ですが、これは凄かった!!で、レビューをアップしそびれて、5月に突入してしまいました。普段は観に行った順番を前後して書かないようにしてい... [続きを読む]
コメント