「レスラー」
子供の頃、世の中で一番強いのはプロレスラーだと思っていた。
プロレスがゴールデンタイムに放送されていた時代で、手に汗握りながら見ていた。
もちろんその後、プロレスは演出された興行であることを知るのだが、それでもプロレスラーの動きは一般人に真似できるものではなく、世の中で一番ではないが強いことには変わりなかった。
先日、2代目タイガーマスクこと三沢光晴が亡くなったのはショックだった。
改めてプロレスラーも死ぬことを実感した。
そんな気分の中、「レスラー」を観た。
ミッキー・ロークが、かつては大活躍で人気があったが、今や落ち目のプロレスラーの孤独な後半生を演じている。
映画の主人公が、演じているミッキー・ロークの人生とシンクロしているため鬼気迫るものがある。
主人公は80年代に大活躍したが、今や老体に鞭打ちながら地方興行に出場して細々と現役を続け、私生活はトレーラーハウスに一人で住み、スーパーマーケットでアルバイトをしている。
娘とはうまくいってないし、長年のステロイド常用で心臓発作で倒れたこともある。
老眼鏡と補聴器が手放せない。
強いはずのプロレスラーも年には勝てないし、基本的にはどこにでもいる親父と変わらない。
いや、むしろ命を削っているのに保障がない分厳しい。
観ていて、初老に差しかかった不器用な中年の悲哀に泣けた。
年とったらさっさと引退して、違う仕事をやればいいのにと思うかもしれないが、これこそ本当に不器用な男なのだ。
日焼けサロンに通ったり薬を使ったり、意外に普段の細かい努力がいる裏側も興味深い。
試合前の打ち合わせも人によっては八百長だというかもしれないが、自分はエンターテナーとしてのプロフェッショナル魂を感じた。
これはもうプロレスラーというよりどんな仕事にも置き換えれる男の生き様だと思う。
また彼が思いを寄せる盛りを過ぎたストリッパーも涙なくして見ることはできない。
演じているマリサ・トメイが本当に若くないのに身を張っている。
監督のダーレン・アロノフスキーは映像先走り派だと思ったが、ちゃんと物語が描けることがわかった。
アカデミー主演男優賞は「ミルク」のショーン・ペンだったが、自分は絶対にミッキー・ロークだと思うけどなあ。
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自らの生き様を貫き通す中年プロレスラー役がミッキー・ロークのはまり役となり、数々の映画賞に輝いたエネルギッシュで感動的な人間ドラマ。監督は『π』『ファウンテン 永遠つづく愛』のダーレン・アロノフスキー。主人公の一人娘には『アクロス・ザ・ユニバース』のエヴァン・レイチェル・ウッドがふんし、主人公が好意を寄せるストリッパーを『いとこのビニー』のマリサ・トメイが演じる。栄光の光と影、落ちてもなお失わない尊厳を体現するミッキー・ロークの名演に、大きく心を揺さぶられる。[もっと詳しく]
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はじめまして DVD
で友達と 見ました
>観ていて、初老に差しかかった不器用な中年の悲哀に泣けた。
年とったらさっさと引退して、違う仕事をやればいいのにと思うかもしれないが、これこそ本当に不器用な男なのだ。
プロレス以外のことは みんなダメ
なんですよね ランディは。一種の"職人気質"って ヤツですか・・・
それでも、娘との 約束をすっぽかすのは さすがに まずいぜ
せっかく 親子関係の修復のチャンスだったのに
投稿: zebra | 2011年10月 4日 (火) 06時58分