「フロスト×ニクソン」
1974年。ウォーターゲート事件で、アメリカの歴史上、初めて任期途中で自ら辞任した大統領であるリチャード・ニクソン。
イギリスの人気テレビ司会者で、全米進出の野望を抱くデビッド・フロスト。
フロストはニクソンの単独インタビュー番組を作り、ニクソンから謝罪の言葉を引き出そうとしていた。
しかし、腐っても世界を相手にかけひきをしてきた海千山千の元大統領ニクソン、法外なギャラを要求しつつ交渉を有利に進めようとしていた。
借金までして番組制作をしていたフロストは、番組を放送局に売るためには、ニクソンから謝罪の言葉を引き出さなくてはいけない。
フロストVSニクソンは、それぞれのブレーンを巻き込み壮絶な駆け引きを展開していく…。
息詰る心理合戦だが、よくよく考えてみたら、ただのトーク番組なんよねえ。
だけど、今のテレビ番組とは違ったユルユルな予定調和のではなく、お互いのガチンコ勝負なのである。
日本なら、田中角栄とタモリみたいなものかもしれない。
ニクソンといえば同じ時期に公開されている「ウォッチメン」にも登場し、合わせて観ると楽しめること請け合いだ。
全編会話しているだけとはいえ、異常な緊迫感が漂っており、ここらへんは「13デイズ」に似ているものがある。
ニクソンも歴代大統領ですっかり悪者だが、実はヴェトナム戦争の終結や、中華人民共和国の承認など意外に業績はあるのだけど、そこらへん軽くスルーされているのが悲しいところで、結局ウォーターゲート事件の真実もわからず、ケネディの暗殺の次くらいに謎が多かったりする。
この映画の面白いところは、結局できなかったが政界への復帰への野望や、メディアを使ってもイメージ戦略など、ニクソンからの立場も描いていることだろう。
一方では借金まで作って背水の陣で挑んだフロストの心理状態など、どちらにも共感できるのだが、サラリーマンにとってはボスがこけると自分も危ないというブレーンの立場も痛いほどわかってしまうのだ。
さすがにロン・ハワードは職人監督だけあって、演出が手堅いなあと感心!
まあそれ以上に、原作者であるピーター・モーガンの脚本によるものが大きいだろう。
ニクソンをフランク・ランジェラ、フロストをマイケル・シーンが演じており、この二人は舞台版と同じ配役だそうだ。
特にフランク・ランジェラのニクソンは迫力満点であり、身体の大きさもあって、正に怪物である。
だからこそ、最後の「あの顔」が生きるわけなのである。
しかし、「フロストVSニクソン」でなく「フロスト×ニクソン」って、BLっぽくてちょっといやだ(考えすぎ?)
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