「ALWAYS 三丁目の夕日」
「三丁目の夕日」は30年以上連載している漫画で、子供の頃はあの絵柄があまり好きでなかった。
大人になってやっとこの漫画の面白さがわかるようになってきた。
この漫画を映画化すると聞いた時に考えたのは昭和30年代を映像で再現できるのかということだった。
というのも、今や昭和の時代を再現するのは時代劇以上に難しいものがあり時代劇は当時を知る人がいないので、イメージ的なもので済んでしまうのだが、さすがに昭和30年代とかだとその当時を知る人がゴロゴロしており、中途半端に再現してしまうと違和感を感じてしまう人もいるだろう。
だからこそ、TVドラマなどでは、ニュースフィルムなど時代の記号的なものを入れて時代のお約束を作ることで終わってしまうことが多い。
しかし、この映画はCG等を駆使して物凄く広い範囲で昭和30年代を再現しており、その最たるものが建設途中の東京タワーだったり、高層ビルがない街中だったりする。
これだけでも見る価値は十分ある映画で、CGが未来もしくは、この世に存在しない見たこともないものを表現するだけでなく、少し昔の過去を表現するために全面的に使用されているのは日本映画では珍しいのではないか?(いや実際はどうかわからないけど・・・・・・)
もちろん、厳密な意味では時代考証的にどうかなあと思うところもあったりするのだが、レトロフューチャー的な要素もあって良しとする。
物語は昔は良かった的な懐古趣味な話でなく、昭和30年代を通して未来への前進を描いており、その象徴として東京タワーが効果的に使われている。
最初半分位しかできていない東京タワーが最後は夕日の中で完成しているのは泣かせるものがある。
いや、この昭和33年の再現は見事で、スタッフの皆さんは秘密結社「イエスタデイ・ワンスモア」(「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」を参照)を設立して20世紀博の地下の昭和の町並みを作れるよ、いやマジで。
昭和33年の東京を舞台に自動車修理工場の鈴木オートと、その向かいで駄菓子屋をする茶川を中心として話は進んでいく。
鈴木オートには集団就職で六子がやってくるのだが小さな町工場にがっかりする。
しかし、六子は徐々に仕事を覚えて鈴木オートには必要不可欠な存在となっていく。
一方、茶川は芥川賞の選考に残った経験がありながら、今は少年誌に冒険小説を書いている。
ある日、淡い恋心を抱く飲み屋のおかみヒロミに頼まれ、身寄りのない少年・淳之介を預かることになる。
自分がこの映画で懸念していたのは、原作のロクさんが女の子になっているところで、いくら何でも集団就職で来た女の子が自動車修理工場では働かないだろうと思っていたが、映画の中ではそこらへんの設定をうまく説明していたので思った以上に違和感を感じなかった。
それよりも演じている堀北真希(B82-60-H85)が良い味を出していた。
原作では爺さんの茶川先生が映画ではえらく若くて、演じているのが吉岡秀隆であることだった。
どちらかというと、吉岡秀隆はロクさん役がピッタリなのだが、ちょっと年をとりすぎているので無理なんだろうなあ。
さらにいうと、自分の中の彼のイメージはいつもべそをかいて叫んでいるイメージしかない。
しかし、この映画ではシリアスとコミカルな演技をうまく使い分けており、少し「男はつらいよ」の渥美清を思わせるところもあり、正直見直してしまった。
その他、短気だけど家族にはやさしい父親役の堤真一は「フライ,ダディ,フライ」と全く逆の役どころで面白い。
母親役の薬師丸ひろ子(B80-W60-H84)もハマリ役だった。
セーラー服のイメージが強い彼女も今やすっかり母親役でも不自然でなくなっている年齢になったんだなあ(遠い目)
ヒロミ役の小雪(B83-W58-H85)はいつも困った顔をしているので、今回の幸薄い役は良いと思うぞ。
映画は泣かせる展開かと思いきや、意外に笑えるところが多く、泣かせどころとのバランスがうまいと思った。
自分が良かったなと思ったのは、お守りのエピソードと万年筆のエピソードで、人のやさしさに感動したよ、いやマジで。
この映画の凄いところは普通の人情話をCGを駆使して作ってしまったところで、監督の山崎貴は「ジュブナイル」の時もそうだけど、特撮負けしない演出をする人で、自分としては次に何を見せてくれるか期待大である。
あと、この映画を観て個人的に考えたこと。
自分とこにあったテレビって昭和40年代当時なのに相当古くて、実は昭和30年代のものだったんだなあということがなんとなくわかったよ。
親に聞いたら昭和33年にテレビのある家は相当金持ちらしく、我が家に来たのは昭和38年らしい。
う~ん、デジタル放送とかいってもすぐに見ている家は多くないので、やっぱり実際に普及するのには5年~10年はかかるものかもしれない。
そう考えると鈴木オートは結構儲かっている会社なのかと思ったが、自分の家が貧乏だったという可能性は大きい。
冬のシーンで出てきたあの手の湯たんぽは結構最近まで使っていたよ。
今は家の構造が暖かいせいか、湯たんぽがなくても全然OKだけど、昔は冬は真剣寒かったような感じがする。
六ちゃんのような住み込みの職人って昔は結構いたなあ。
いや、もっというとおじいちゃんおばあちゃんがいるのは当たり前だし、中にはおじさんとかおばさんとかも一緒に住んでいる家があったりしたんだけど。
あと、自分の住んでいたところは昭和50年近い時まで舗装されていない道があって、実は都会と田舎のギャップって10年位あるのではないかと思われる。
そういえば、小学校に入っても電話がなかった自分の家って貧乏のせい?
この映画は家族で観ると異常に盛り上がりそうだなあ。
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47年後に、逢いましょう。
すべての日本人に贈る
夢と希望いっぱいの珠玉の感動作!!
文部科学省選定作品
★スタッフ★
監督・脚本・VFX:山崎貴
脚本:古沢良太
音楽:佐藤直紀
主題歌:D-51 「ALWAYS」
★キャスト★
茶川竜之介:吉岡秀隆
鈴木則文:堤真一
石崎ヒロミ:小雪
星野六子:堀北真希
大田キン:もたいまさこ
宅間史郎:三浦友... [続きを読む]
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